離島百貨店×FDA 離島と離島がつながりローカルtoローカルから生まれるイノベーション

FDAは国内チャーター便の運航に力を入れており、年間1,000便以上を運航しています。FDAが使用している機体はエンブラエル社製の最新鋭ジェット機ERJ170/175で、全長29.9m/31.68m、全幅26m(9号機以降は28.65m)、定員76/84名の小型機であるため、主要空港のみならず小さな空港にも就航することができます。

日本最北端の稚内や中標津、利尻、東京の八丈島、山陰の隠岐、長崎の福江島、鹿児島の種子島と奄美、沖縄の久米島、宮古島、石垣島といった南端の離島まで、定期便就航のない空港間をダイレクトに結んでいます。

FDAチャーター便の運航数の多い離島就航地のひとつが“隠岐”です。2019年で就航から8年目を迎え、年間70~80本ほどチャーター便を運航しています。
隠岐といえば、日本一の海食崖がつらなる景勝地や豊富な魚介類、隠岐牛、地酒など美食もそろっており、大変魅力ある観光地です。

そんな隠岐を拠点に全国の離島を結ぶ魅力的な活動に取り組んでいらっしゃる『離島百貨店』の青山さんと杉崎さんの元を、FDAチャーター事業部長の山田が訪ねました。

一般社団法人離島百貨店 代表理事
青山 富寿生さん

Fujio Aoyama

島根県海士町役場交流促進課長・観光協会事務局長として、平成17年度には1年間で104名42世帯のIターン受入を達成、島製品の市場価値劣位解消、地域通貨導入、関係人口の概念の発想・実践など、島の挑戦の最前線を担う。その中で、離島の問題解決には全国の離島の連携が必要だと気付き、34年間勤めた海士町役場を退職。一般社団法人離島百貨店を立ち上げ、離島の問題を根本的かつ継続的に解決する仕組みづくりを行なっている。

一般社団法人離島百貨店
杉崎 存紗さん

Arisa Sugisaki

自給自足の離島だからこそ実現する「ひと主義」経済に惹かれ、一般社団法人離島百貨店に参画。「資本主義」経済で生きることが難しい人などが、島に拠点を持ち、自分に合った経済圏を行き来できる社会の実現を目指している。リクルートでクライアントサービス企画を経験。学生時代には、スタートアップ、上海キッザニアの企画に参画、最年少学会登壇、日本e-Learning大賞受賞など。

大自然の景観、おいしい山海の幸
魅力満載の隠岐諸島。

FDAの隠岐行きチャーター便を利用したツアーは2泊3日の行程なので、空港がある隠岐の島町から入り隠岐諸島の全ての島を巡ることができると、多くのお客様に大変好評をいただいています。
隠岐諸島には手つかずの素晴らしい資源や美味しい食が溢れていますよね。ローソク島をはじめとするメジャーな観光スポットも素晴らしいですが、個人的には隠岐神社が一番のお気に入りです。パワースポットという言葉は好きではないのですが、隠岐神社に行った後、いいことがいっぱいあるんです。また、“承久の乱”など教科書に載っていた歴史が隠岐にはあり、私にとって刺激的で魅力あるところです。

ありがとうございます。隠岐には自慢したいところがたくさんありますが、やはり自然景観は魅力的だと思います。中でも西ノ島の“国賀海岸”は誰もが一目見た瞬間に「うわぁ~」っと声をあげる絶景が広がっています。一度は訪れてもらいたい圧倒される景観です。私もたまに案内をすることがあったりしますが、案内した中で印象的だったのは、中国から来られた方が「桂林の景観も素晴らしいと思っていたが、この国賀海岸のダイナミックさと圧倒される解放感は桂林とは比べものにならないほど素敵だ」とおっしゃっていただいたことです。私たちはそんな自然の中で生活しているのでさほどピンとはきていなかったのですが、外の方からの声を聞いて、改めて隠岐の魅力に気付かされました。

また、手つかずの自然が残っていることは、大変美味しい食材がそろっている証。隠岐諸島は海の幸に山の幸と食材の宝庫です。天然の魚介類はもちろんですが、恵まれた海域での岩ガキやワカメなどの養殖食材も離島ならではの恵みです。サザエやアワビはもちろんですが、荒々しい波が育むフジツボやカメの手、ニナ貝といった小さな貝も、とても美味しいです。そして離島でありながら、枯れることのない豊富な地下水がもたらす米や野菜などの農作物は、まさに自然の恵みそのものだと思います。

放牧された牛が草を食む光景も隠岐の象徴の一つ。その牛も美味しいんですよ。風であおられたミネラルたっぷりの海水が吹きかかる牧草をいっぱい食べ、起伏の激しい野山を歩き回り足腰の育った牛は『隠岐牛』と呼ばれ、食市場でも高く評価されています。海だけでなく、島の自然景観がもたらす島ならではの食もある。とにかく、隠岐諸島には魅力的な資源がいっぱいです。

チャーター便が
イノベーションを起こすきっかけに。

魅力あふれる隠岐ですが、現在の隠岐空港の定期便運航路線は、島根(出雲空港)、大阪(伊丹空港)のみ。FDAチャーターが隠岐空港に就航を開始したのは2012年度でした。
隠岐空港は1,200mの滑走路を持つ空港として1965年に開港。その後、滑走路を2,000mへと延伸し、2006年にジェット便の運航が可能となった新隠岐空港として生まれ変わりました。
しかし滑走路が延長されたものの基本的に運航される機材はプロペラ機であり、しばらくの間ジェット機は、大阪便が8月限定で運航するのみとなっていました(2018年5月よりジェット機通年運航)。そのため地元からのジェット機の乗り入れ、島根、大阪以外からの誘客を望む声が多く、FDAチャーターの就航はまさに地元の皆様にとっては念願の乗り入れだったようで、大変歓迎していただきました。

飛行機といえば、“定期便”というのに慣れっこになっている節がありますよね。FDAさんのようにチャーター便を就航させるというコンセプトには、とても魅力を感じます。
チャーター便というのは、何かアクションを起こしたり仕掛けたりできるので、新しい出会いがあったり、思いもしない機会が生まれるきっかけになると思うんです。それは、新しい発想にもつながったりして、さまざまな可能性を感じています。観光視点だけでなく生活空間いわゆる暮らし方にも変化をもたらす、今風の言葉でいう「イノベーションを起こす」きっかけになると思うんです。
チャーター便は“発想の転換”ができる魅力的な取り組み。私たちにとって、とてもうれしいことです。

私はもとは東京で働いていたのですが、ふと「離島に行ってみよう」と思い立ち、隠岐の島に弾丸旅行に出掛けました。そのとき、たまたま青山と出会い、話をするうちに隠岐の島の魅力にハマって、今では『離島百貨店』の一員として全国の離島と離島を結ぶ仕事をしています。これは、私にとってのイノベーション。
私みたいに、初めての土地での新しい出会いで、そこに魅了される人はたくさんいると思います。離島に足を運ぶ機会はなかなかないと思います。だから、離島にも就航しているFDAさんのチャーター便はその可能性を秘めている。そう思います。

離島と離島がつながる『離島百貨店』と
ローカルとローカルをつなぐ
FDAチャーター便。

青山さんたちは、全国の離島と離島を結びコラボしながら食や物販を通した離島の魅力発信や、雇用、移住の促進まで行う『離島百貨店』の取り組みを行ってらっしゃいますよね。私たちは航空会社として、「地域に根付き、地域に羽ばたく 地参地翔を目指して」というコンセプトのもと、ローカルとローカルを結び、そこから新しい文化や人の交流が生まれることを期待し、多くの離島にチャーター便を就航してます。なので『離島百貨店』の取り組みには、一脈相通ずるものがあると前々からシンパシーを抱き、面白いなと注目していました。

日本には、北は北海道から南は沖縄まで、全国に400を超える“人が住む離島”があります。全ての島に足を運ぶことはできていませんが、足を運んだ島それぞれに話を聞いたところ、ほとんどの離島が過疎化、人手不足、空き家問題など共通した課題を抱えていました。
海士町のような人口2,300人程度の小さな島がどんなに頑張っても自分の島だけしかどうにかできないし、周りのたくさんの離島も共に頑張らないと続かない。それぞれが個々に対策を講じていますが、なかなか課題解決できていないのが現状です。そんな中、一つ一つはとっても小さな力かもしれないけど、同じ思いを持つ離島が手を取り合い連携することが、それぞれの島にとってメリットがあるのではないかと思うようになり、多くの仲間と一緒に課題解決できる仕組みを整えていこうと『離島百貨店』を立ち上げました。

『離島百貨店』の取り組みの中の基盤になるのが、10年前から取り組んでいる『離島キッチン』プロジェクトです。これは飲食店型のアンテナショップで、東京に日本橋店と神楽坂店の2店舗、そして札幌店、福岡店と、計4店舗を運営しています。現在、全国83の離島の食材や物販を4店舗で取り扱っており、店を訪れるお客様に食を通してそれぞれの離島を知ってもらう仕組みができています。

離島キッチン 日本橋店

月替わりで離島の食材を使った料理をいただける。肉や魚介、野菜、米、卵をはじめ、塩、醤油、味噌などの調味料から酒、ソフトドリンク、お茶に至るまで、徹底して離島素材を使用。写真は30種類以上の島の食材と60種類以上の島の酒を食べ飲み放題のディナー90分5,000円~。

例えば、この店の名前を“海士町キッチン”とするなら、お客様はピンとこないと思いますが、“離島キッチン”と聞けば、皆さん“離島”はイメージができると思います。恐らく来店いただくお客様の多くは、離島のモノが扱われるお店だと認識され、“離島”というフィルターをくぐって来ていただけます。
そして、日本海に浮かぶ隠岐諸島海士町で獲れた白イカの刺身を壱岐の地酒『横山五十』などに合わせて食事を楽しんでいただきながら、「海士町は島根県だったんだ」とか「壱岐はこのあたりにあるのか」と島について知ってもらい、気に入って、実際に島へ行ってみたいと思ってもらえる。

全国の離島から取り寄せた60種以上の日本酒や焼酎、リキュールなどがずらり。コアなものも多く飲み比べするのも楽しい。

日本橋店の店内には、全国の離島の特産品や離島に関する資料も豊富にそろっている。

このように83の同じ思いを持つ離島の仲間たちと連携し、どこかに依存することなく、自分たちの身の丈にあった観光の取り組みを『離島キッチン』をベースに仕掛けて、それがイノベーションにつながればと思っています。

離島キッチン 福岡店

博多の中心部にある閑静な住宅街にひっそりと佇む隠れ家のような店。連日多くの人で賑わっている。写真はランチの『島御膳』1,850円。この日のメインは、八丈島のムロアジメンチカツと海士町のアジフライ。

83の離島とはどのようにして連携されているのですか。

『離島キッチン』のスタッフは10名ほどいるのですが、一人一人が直接離島に渡り1週間から10日ほど滞在し、生産者の元を巡って、それぞれが作ってらっしゃる“自慢の品”を見せてもらい、売れ行き状況などもリサーチ。そして『離島キッチン』で販売を手掛けさせてもらうよう交渉するなど、バイヤー的な活動を行ってきました。ここにくるまでに、10年かかりました。
当初は、小さな販売車で『さざえカレー』を販売することからスタートしました。お客様から「こんな商品がないの?」とリクエストなどもいただき、さまざまな離島に掛け合って扱う離島商品を増やしながら地道な活動を続け、今に至ります。

我々のチャーター便が就航している利尻や八丈島、沖縄離島等の食材のお取り扱いもあり、さらには離島の雇用促進まで行ってらっしゃいますよね。

『離島キッチン』ではそれぞれの魅力的な食材や特産品を扱うことで、離島と都市を繋ぐことをしてきましたが、「人手不足」「空き家問題」などの離島の共通課題を連携することで解決できないかと考えています。一つの自治体だけの力では解決できなかったことも、連携することで情報を共有し、解決できることもあると思うんです。

『離島百貨店』、『離島キッチン』の取り組みは、ローカルとローカルをつなぎ“地参地翔”を目指すFDAの理念と一致しており、私たちももっと離島を元気にすべく応援できればと思っています。

地域に参入して地域を飛躍させる。私たちもまったくFDAさんと同じ思いです。自分たちだけの利益を考えた定期便の発想だと、どうしても一方通行になりがちだと思います。地方創生・離島創生の肝は連携だと思います。個々が主張して一時飛躍したとしても長くは続かないことを今まで行ってきたように思います。これからは、互いの良い部分や苦手な部分をそれぞれが認めそして補い合える関係性を構築することで、地方・離島は飛躍できると思います。その仕組みを創出するのが、私たちが取り組む“離島創生・離島百貨店”だと思っています。

おそらく、FDAさんとは共通する部分が沢山あるように思います。“地参地翔”というワードから、私たちと同じような熱い想いが伝わってきますので。企業連携は勿論ですが私たちが連携した離島自治体との連携もさらにネットワーク化を図り、一緒に人の交流・経済の交流・理念の共有を図れることを期待しています。地方自治体が民間企業さんと理念を共有し、地域の利益を生み出すことを共に取り組む新しい地方創生スタイルを是非一緒に構築できたらうれしいですね。

航空会社としてできることというのは、シンプルに「人を運ぶこと」なのですが、ただ事務的に行うのではなく、我々が現地に足を運び、現地の人との交流を通して思いを共有し、「こんなことをやってみよう」と新しいアイデアを出し合いながら継続的なチャーター便を飛ばしていきたいと思っています。それができることは私たちも感謝しています。

私たちだけの小さな力では何もできませんが、多くの離島自治体さんやFDAさんのように地方に目を向けていただける企業さんと連携することは、モノや人の交流によって新たな価値や経済活動が生まれ、地方が賑わい、元気が創出されることの土台作りだと思っています。『離島キッチン』、『離島百貨店』を今頑張らなければいけないという強い想いで取り組んでいきますので、これからもよろしくお願いします。