稚内チャーター便10周年記念 スペシャル対談 FDA×礼文町・利尻町・利尻富士町・稚内市

北宗谷の仲間たちとつなぐ
地方×地方の新たな旅

日本最北の空港・稚内空港と各地を結ぶ稚内チャーター便就航10周年を記念し、就航から現在まで共に支え合ってきた北宗谷4市町担当課長の皆さんと集い、これまでの歩みとその思いについて語り合おうと、FDA営業戦略部長の山田が、皆さんが待つ礼文島を訪ねました。

皆さん、お忙しい中お集りいただきありがとうございます。稚内チャーター便10周年を記念して、これまで苦楽を共にしてきた北宗谷地区4市町の担当課長の皆さんと一緒に歩みを振り返り、語り合いたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。2013年の就航当時を振り返って皆さんいかがですか?

2012年まで稚内空港では、関西と中部からの他社便で年間25,000~30,000人の誘客ができていましたが、その年で休止すると宣告されている状況でした。タイミングよく北海道庁からFDAを紹介され、思い切って 稚内市からFDAにプレゼンの機会をいただき、チャーター便を実現 することができました。 初年度には17往復、計34便 飛ばしてもらい、翌年も実績を積み上げていただいた。当時、FDAを知らない宿泊事業者、ツアー会社、バス会社等が大半だったため、その調整が大変だったと先輩方から聞いたことがあります。最初の2~3年は受け入れ側である私たちも必死でした。

初便を放水でお出迎え

初便お出迎え

ちょうど観光客が減っていた時代、その中で チャーターを飛ばしてくれるFDAの存在は大きかった。 利尻に直行便で来てもらえるようになり、より一層身近になりましたね。

就航時には初めてFDAの機体を見て感心した程度でしたが、当時の報道などを見返すと、 現在の離島振興を支える大きな出来事だった と改めて思います。

私は当初関わることはありませんでしたが、その後便数も増え、当初よりFDAがもたらす恩恵は、大きくなってきたなぁと感じています。

それまでは、首都圏や中部、関西などの観光客がほとんど。チャーター便の就航によって、鹿児島など 遠方の地方からも観光客が訪れる機会にもなった と自負しています。稚内空港は鹿児島空港から3時間程度、稚内市は枕崎市と友好都市提携を結んでいますよね。

礼文町も与那国町と友好交流協定を締結しています。以前は直行チャーター便はありませんでしたから、大都市を起点に2泊3日はかかっていましたが、今は直行便なので日程を短縮できるため、 地方の方もツアーに参加しやすくなった点は大きな変化 だと思います。

チャーター便就航による
経済波及効果はいかがですか?

地元の店舗でも 「FDAが来るようになって売上が上がった」 という声も聞きますし、実際にたくさんのお客さんが来ていることを実感しているようです。

直接観光に関係する分野ではないところでも、 観光客が増えることで雇用を生んだり、好循環が生まれている のではないでしょうか。

礼文島や利尻島の観光拠点でもある稚内市の経済効果はどうですか?

例えば公共交通機関には大きな効果をもたらしていますし、稚内に宿泊するケースもありますので、宿泊・飲食費のみならずお土産の購入など、 幅広い分野で経済効果が波及して います。統計をみてみると、 FDA稚内チャーター便就航から10年間で5万人以上の送客 があり、 北宗谷に波及した経済効果は約35億円 といわれています。

この4市町の団結力で、数年前からフェリーターミナルでお出迎えをしていただき、地元の皆さんの歓迎の気持ちが伝わってくるようです。

チャーター就航にともない「FDAでようこそ!」という横断幕を作り、お出迎えなどの取り組みをスタートしました。売店や宿など一部の人しかFDAを知らなかったとしてもそういう場面を目にすることで浸透し、認知度を上げていくことにつながったと思います。

利尻空港とは数年前から直行便でつながりました。

やっぱり機体を見ると実感ありますね。フェリーターミナルや利尻空港到着時のセレモニーでは、地元の皆さんが叩く太鼓にも「ようこそ」って力がこもります。

利尻空港到着時のセレモニー

稚内市には、稚内ブランドの商品などをお土産に提供いただいています。

お渡ししたことがきっかけで、 お土産で購入いただいたり、それがふるさと納税にもつながっている可能性もあり、見えないところで広がっている んでしょうね。

これまでの10年、FDAと4市町の取り組みが
どのような形で花開いてきましたか?

毎年チャーター便の季節が終わると、北宗谷から20人ほど静岡本社まで足を運んで弊社代表・鈴木与平にご挨拶いただき、みんなでそろって食事会をするというのが恒例行事。
お互い顔の見えるコミュニケーション をとることで、 途切れることのない関係性を構築する ことにつながっています。数年前の話ですが、プロモーションも、関西空港からのチャーター便が多く運航するので「大阪のみんなにアピールしようよ」ということになり、あべのハルカスでみんなでPRしました。楽しい思い出でもあり、 団結力の源にもなっていますね。

あべのハルカス(大阪市)で就航地プロモーションを実施

今年も一つ、企画してやりますか?

いいですねぇ!

自治体ごとの壁を越えて、 FDAが核になり4市町が同じ思いでやることが、大きな力を生む といえますね。

毎年年末には観光協会や宿泊施設、バス会社等も集まっていただき、その年の反省と翌年の展望などをお話させていただく機会を設けており、 地域全体を巻き込んでつながることでさらに大きな力を生んできました。 利尻空港への直行便実現はまさに長年問われてきた課題の一つでしたが、弊社だけでなく 4市町と地元の民間企業の惜しみない協力 でさまざまな課題を乗り越え、 この10年で“稚内チャーター便ならではの旅”を創造できた ことは間違いありません。

コロナ禍において、観光客が減る中で
4市町にとってFDAのチャーター便は
どのような存在でしたか?

2020年コロナが始まった年も、少し感染拡大が収まりつつあった9月末に神戸からチャーターを飛ばしました。弊社担当社員も 「チャーターの火を消したくない。1便でもいいから飛ばしたい」という熱い思い を抱えていて、それに応えたかった。数も少なく、経済効果もなかったとは思いますが、 FDAにとってそれを実現したことは誇りです。

2020年初便到着

2020年初便お出迎え

当時、地元も来てほしいけれど夏のイベントも全て中止で、各店舗も閉まっている状況。それでも飛んでもらった事実が、今の関係構築につながっていると思います。 1本でも、2本でも飛んでくれたことが、うれしかったですね。

離島で医療も十分ではない中で、観光客受け入れは難しい面もありましたが、感染リスクを抑えつつ、経済効果を波及させるには、 地方と地方を直接結ぶチャーター便の存在は大きい のではないでしょうか。

それぞれが目指す新しい旅のスタイルを
教えてください。

利尻町と一緒にやっている「利尻クエスト」は、観光名所をめぐって景品をもらうスタンプラリーなのですが、 広域連携で実施することでさらに魅力を増やせる し、 団体から個人旅行まで旅行形態が変わっても楽しめる。 こういう取り組みを成長させていきたいですね。

まさに観光客の皆さんには、利尻らしい楽しみを発見してもらえるような体験を期待されているので、受け入れ施設などを増やしていきたいと考えています。

礼文島には7つのトレッキングコースがあるので、「トレイル7」という企画を進めています。宿泊期間の延長にもつながり、国外よりも国内、屋内よりも屋外にニーズがあるので、こうしたアクティビティーに力を入れていきたいですね。

礼文島でのトレッキングの様子

この2年ほど増えている サイクルツーリズムに注目 をしています。他町の皆さんのようなキラーコンテンツが稚内市にあるわけではないので、「最北」「白い道」などをキーワードに老若男女が気軽に行けるようなスポットを早急に整備していきたいと考えています。

サイクルツーリズムについては、FDAでも自転車を入れる専用ケースなどは提供できますよ。これからは、多彩なアクティビティーに特化した企画なども用意して、 世代を問わず広く楽しんでもらえる新しい旅 をご提案していきたいですね。

皆さんにとってFDAとは
どのような存在ですか?

間違いなく今後とも長いお付き合いをお願いしたい大切なパートナー。 稚内市との歴史、利尻直行便の実現などこれまでの経緯を踏まえ、さらに一歩進んでいけるようよろしくお付き合いください。

例えば、シニアのお客様の口コミが若い世代の観光客に伝わり、ニューファミリーが来島するとその子どもたちがまた来てくれるというように、 一人ひとりの「行ってみたい」と思わせる旅が、未来への種まきのようにつながっていく のではないかと期待しています。

利尻富士町にとってもFDAは大切な存在です。 一緒に地域を盛り上げていくよきパートナー であり続けたいですね。

FDAが来てくれる前に比べて、4市町のきずなも深まり、互いに相談して助け合うことが増え、とてもよかったと感じています。私たち同様、FDAは他の地域の方々とも深くつながっていただき、私たちもそうした地域の方々ともつながっていきたい。 FDAを核とした新しい地域コミュニティーの創造を期待しています。

実はFDA社員のほぼ全員がこのチャーター事業に携わっていて、この地元の皆さんの熱や思いを社員たちにも共有したいと思い、社員研修を毎年行ってきました。

社員研修の様子

研修から帰ってくる社員が、 その感動を胸に次のチャーターに向き合うという、プラスのスパイラル が生まれている。 それが稚内チャーター便の原動力にもなっている と感じています。とにかくずっと継続したい。安定してやりたいという思いが強いですね。我々が年を取って、もし担当を離れてしまうことがあっても、北宗谷地区の皆さんとはずっとつながって、地域のために一緒に何かできることを願っています。

今回の対談は礼文町「北のカナリアパーク」で行いました。ご協力ありがとうございました。